2008年6月1日日曜日

タウン誌「NaO」 ウェブ化の背景は? 売り上げ気にせず「冒険」 /長野

 県内のグルメスポットや、観光地などの情報を載せたタウン誌「NaO(ナオ)」(まちなみカントリープレス社、長野市東町)が先月、紙媒体の雑誌発行をやめ、「WEB NaO」という無料のホームページを開設し、インターネット上の“雑誌”に生まれ変わった。出版業界全体の売り上げが下降する中、県内売り上げ1位の老舗タウン誌の決断理由を探った。


載せたい記事を制約なく

 「ここで軸足を変えないと、時代の流れに乗れなくなる」。同社の全雑誌を監修する市川美季統括編集長は昨春から危機感を募らせた。07年のインターネット広告費が、初めて雑誌を超えたという調査結果(電通調べ)も出ている。

 95年創刊。ローマ字の「NAGANO」を短縮したのが雑誌名の由来だ。公称8万部で、20~30代の県民を中心に愛読されてきた。しかし、「読者も多様化し、スイーツやラーメン、カフェなど特集をやってきたが、別の企画をやろうにも、売り上げが気になって冒険できない」と紙媒体の限界を感じ始めたころだった。

 1年前、ウェブ化に向けて検討を始めた。社内の反対の声に対し「長期的に見てほしい」と説得。情報を載せていた店や書店などにも「NaOをやめるのではなく、変えるんです」と理解を求めた。

 そして4月20日、無料で読める「WEB NaO」がオープン。雑誌で人気だった連載を引き続き掲載した。一見、雑誌をそのまま転載したようだが、ウェブの特徴を最大限生かして「載せたい記事を際限なく、すぐに掲載できる」メリットがあるという。これまでの記事・写真の紙面上の制約がなくなり、毎日の更新も可能だ。同時に県内だけでなく、全国発信されることも大きい。

 市川さんは「今後は『冒険』する企画も載せていく。長野が魅力的に見えるようなサイトを作っていきたい」と意欲的だ。

出典:毎日新聞