2008年6月1日日曜日

嬉し恐ろし「ゴキブリレストラン」

そろそろ黒いアイツが動き回る季節。ドラッグストアで、インパクト大の商品を見つけた。

その名も「ゴキブリレストラン」。

六角形の箱は緑、茶、オレンジ色に彩られ、それぞれ「野菜コーナー」「肉コーナー」「デザートコーナー」の3つに分かれている。

パッケージの裏を見ると、こんな説明が……。

「オニオンエキスが入ったさっぱり野菜味!!」「チキンエキスが入ったこってり肉味!!」「ピーナッツペーストが入った水分リッチな甘味!!」

どれも美味しそう~などと、一瞬、そのコピーにつられそうになったが、当然のことながら人間は食べられない。

グルメなゴキブリを徹底研究した結果、生活環境や種類、成長ステージによって、エサの好みが異なることがわかったというけど、なぜこんなにもヤツらに至れり尽くせりの商品を?

きっかけについて、アース製薬株式会社に聞いた。

「今から約20年前のホウ酸ダンゴは、砂糖と澱粉を混ぜ合わせた白玉ダンゴのようなものでした。でも、『ゴキブリは本当にこんなものを好んで食べているのか』という疑問が生じ、開発のきっかけとなる研究が始まったんです」

いったいどのような研究によって「野菜」「肉」「デザート」の3種が選ばれたのか。

「様々な味を付けたダンゴをゴキブリに食べさせ、地道なデータ収集を行いました。その結果、ゴキブリの種類や成長ステージによって、食の好みも異なることがわかったんですよ。また、研究室で飼育しているゴキブリと一般家庭にいるゴキブリとでも食の好みが異なっていました。これによって、普段食べている餌(生活環境)によっても、食の好みに変化が生じることが分かりました」

たとえば、クロゴキブリの場合は、若齢幼虫は野菜好き、老齢幼虫は肉好き、成虫はデザート好きであり、チャバネゴキブリの場合、幼虫は肉好き、成虫は野菜好き、デザートは幼虫も成虫も好きであるとの結果が得られたのだとか(アース製薬試験)。

様々な種類、様々な成長ステージのゴキブリに合わせて、それぞれに好みの味を作るなんて、ずいぶん贅沢な話の気もするが、全部まとめて入れてしまうという方法はなかったんでしょうか?

「これらをハンバーグのように混ぜ合わせてしまうと、肉の味が強くなり、他の味が負けてしまって、ゴキブリの幅広い食の好みに対応できないんですよ。そのため、3種の味の餌を用意しました」

既に蓄積していた研究データを応用し製品化されたというこの商品。研究の中で、いちばん苦労した点は?

「虫の食の好みのデータを収集することですね。ゴキブリの幼虫は、餌をわずかな量しか食べないことから、結果が得られにくかったという理由です。しかし、弊社では手間のかかる幼虫を利用した研究まで徹底して行いました」

独自の研究成果に基づく全く新しい発想の商品は、非常に高い評判を得ているよう。

どんな具合に魅力的で、どんな具合に惹きつけられてしまうのかは、当のゴキブリに聞いてみないとわからないものの、徹底した研究を経て生まれたこの商品。ゴキブリにとっては、嬉し恐ろしの最終兵器となるかもしれません。

出典:エキサイト