専用駐車場、温泉、名物グルメ・・・ 小鹿野でまちおこし
最近、秩父郡小鹿野町を訪れると「WeIcome Riders in Ogano」と書かれた看板やのぼり旗が目につく。一部の〝不届き者〟の暴走で、とかく誤解されがちなライダーを「温かく迎えよう」という、同町の思いが込められている。全国でも珍しい「オートバイによるまちおこし」事業。関係者は「ライダーの〝聖地〟にしたい」と意気込んでいる。
小鹿野にオートバイライダーが目立ち始めたのは三、四年前から。要因の一つは「首都圏のライダーにとって、小鹿野は志賀坂峠を越えて群馬や甲信越方面へのツーリングコースの休憩地点として最適な位置にある」(町計画推進室)ためという。例として町は、名物の「わらじカツ丼」の店や、日帰り温泉などに立ち寄るライダーが多い事などを挙げる。背景には、従来は取得が困難とされてきた大型二輪免許が、教習所で比較的簡単に取得できるようになり、若いころにあきらめていた中高年や女性ライダーの増加傾向がある。
町は昨年、「来やすく、居やすく、また来たい町にしよう」と同事業をスタートさせた。町内の温泉、食堂、宿泊施設などの利用増につながればとの狙いもある。今年に入り、町内の観光商業情報館「夢鹿蔵」と道の駅「両神温泉薬師の湯」に専用の駐輪場を新設。歌舞伎の隈(くま)取りデザインのヘルメットや帽子、Tシャツ、ワッペンなど、事業のロゴマーク入りグッズも続々と誕生している。
同町出身のシンガーソングライターACKO(本名・若林晃子さん)が作詞作曲したテーマソング「Sweet road~R299」も作られた。六月から、試験的に正午のチャイム代わりに防災無線で放送する。町内の飲食店の中には、来店したライダーにドリンク、フルーツのサービスや、ロゴマーク入りのボールペンを贈呈する店も現れた。小鹿神社ではオートバイの安全祈願も始めている。
地元の「泉田レーシングクラブ」(会員十五人)の金子文夫会長(49)は「自分たちもオートバイが好きで集まっている。催しなどできる範囲で協力、事業を盛り上げていきたい」と歓迎している。
オートバイの専門家で、アドバイザーの鵜飼清志さん(62)が中心になって、トレッキングコースづくりも行われている。豊富な自然をステージに初級から上級者向けの十種類のコースやレンタルも検討。鵜飼さんは「町おこしというと観光客の動員数で判断する風潮があるが、オリジナル性と人とのぬくもりがポイント」と話す。
町計画推進室の長谷川伸一さん(50)は「五年ぐらいかけてトレッキングコースなど、環境整備を進めたい。将来は仲間が集える民間のライダーズカフェ、オートバイミュージアムやテーマパークができれば」と夢を語る。
出典:埼玉新聞