吟醸の普及で地位築く、挑むは日本酒文化復興
山形の銘酒「出羽桜」。うまい吟醸酒としてマスコミで取り上げられることも多い。その地位の獲得は、醸造元の出羽桜酒造が1980年に打って出た挑戦にあった。今後、同社がより強い会社になるには、縮小する日本酒市場の拡大にまで乗り出す必要があるという。その意気込みを聞いた。
「出羽桜」は、有名グルメ雑誌や男性ファッション誌の、こだわりの酒を紹介するページにしばしば登場する。そればかりか、有名人が書くコラムや女性誌にまで取り上げられる。「出羽桜」は、会社の年間出荷量で一升瓶換算80万本と中堅クラス、それもその60%が山形県内で消費される地元指向の酒。にもかかわらず、何千とある日本酒銘柄の中から選ばれ、語られる。
各種コンクールで好成績
出羽桜の醸造元、出羽桜酒造は、1980年に大きな挑戦に打って出ている。吟醸酒「出羽桜 中吟醸」(後の桜花吟醸酒)を旧二級酒1.8? 1500円で売り出した。そこには「吟醸酒を広めたい、大衆化したい」という思いがあった。同酒は、そのうまさが受け、すぐに「出羽の中吟」との愛称で呼ばれるほどの人気商品となった。
出羽桜酒造の四代目、仲野益美社長は言う。「それ以前の吟醸酒は、特別のご贈答か、コンクールに出すためだけの酒でした。多くの人が普通に楽しむ酒ではなかったのです」。
同社の「うまい酒=吟醸酒」を量産、多くの人に楽しんでもらうという試みは成功、以来「桜花吟醸酒」は同社の主力商品として現在まで約30年間続いている。
出羽桜酒造が97年から始めた輸出も、吟醸の味が海外でも受け好調。全出荷量の内5%弱が海外へ出ている。「ですが、国内でも海外でも単に吟醸だから売れるという訳ではありません。弊社では、製造の殆(ほと)んどを伝統的な手造りで行っています。手造りでは、様々な製造過程で調整や改善が利き、品質を保証できます」(仲野社長)。「原料米の選別、品質を落とさない自家精米、吟醸酒を熱処理する場合は瓶詰後に施すなど、仕込みの前後も手を抜きません」(仲野賢社長室長)。
出典:nikkei BPnet