2008年2月3日日曜日

ショコラ革命起こす惑星 ロイヤルホテルのレクラ

ショコラ革命起こす惑星 ロイヤルホテルのレクラ

 寄り添って歩く男女の足がショーケースに吸い寄せられた。のぞき込んだ先には天井から差す光を受けて輝く赤や青の小さな球体。連想するのは太陽系の惑星たち。2人の声が重なる。「きれーい。これがチョコレート?」

 チョコレート専門店「レクラ」は、大阪・中之島のリーガロイヤルホテルのロビーに、昨年5月に登場した。ホテル独自のチョコを売る。宝石のように並ぶ商品は予想を上回るヒットで初日の売り上げは想定の2倍以上の64万円。最初の週末には1時間待ちの列ができた。

 レクラの構想を描いたのは脇幸二常務(61)。レストランや物販で扱っていたチョコは、ホテル内にある専用アトリエで作られていた。そのチョコレートを扱う専門店をロビーに出せないかと約5年前に考えた。

 ジャン=ポール・エヴァンなど海外の高級ブランドの味や売り方を研究した。同じではつまらない。差別化の手法は簡単にわかった。「高級チョコは茶色ばかり。うちは色豊かにいこう」。提案に賛同した前社長は大の宇宙好き。「テーマは惑星が良い」

 面食らったのはショコラティエの岡井基浩さん(36)だ。「色つき? しかも惑星?」。一流の職人にとってチョコはカカオ本来の苦みが命で、茶色こそ王道。色を付けるには甘いホワイトチョコを使わなければいけないが、それは邪道だ。

 しかし、「これも業務命令」。同僚と相談し、惑星のイメージを膨らませた。たこ焼きの型のような半球の穴に、指で食紅を塗って地球や火星の模様を描く。ホワイトチョコを薄く張って固め、ガナッシュを包んで二つ合体させて球体に。

 完成した「惑星」は、ほのかに香るライチやライム、ホワイトチョコの甘さ、ガナッシュの苦みが互いを引き立てあい、濃厚な風味に仕上がった。「職人の常識の中にいたら、出会わなかった喜びかも」と岡井さん。

 レクラの年間の販売目標は、当初の5千万円から1億円に引き上げられた。だが、脇常務はさらに先を見る。

 惑星と共に人気の「和ショコラ」は、源氏物語の十二ひとえを表し四角い茶色のチョコに和紙のような緑や赤の模様が入る。「チョコに日本文化の風を送り、世界に発信するんだ」。シロウトの発想が、チョコの輝きを変えていく。


〈キーワード〉

 ◆店頭販売のみ 店名の「レクラ」はフランス語で「輝き」を意味する。評判を聞きつけた遠方の客から通信販売を求める声や、「デパ地下」に誘致する声も多いが、しばらくは中之島のホテルにおける店頭販売のみ。岡井さんらショコラティエの繊細な技術が必要で、大量生産できないのが大きな理由。配送は可能だ。

 ◆「ホテイチ」事業 リーガロイヤルホテルは02年4月、「ホテルの味を家庭に」を合言葉にホテルレストランの総菜類やパンを売る「グルメブティックメリッサ」を1階にオープン。高級で華やかな品ぞろえが人気を呼び、「ホテイチ」ブームの火付け役になった。デパ地下に出店しているほか宅配サービスもある。事業の年間売上高は約40億円。

出典:朝日新聞