木曽地方の伝統食「すんき」 温暖化で漬ける時期遅く
赤カブの葉を乳酸発酵させて作る木曽地方の冬の伝統食「すんき」を漬ける時期が、近年遅くなっている。地球温暖化の影響か、すんき作りの合図となる降霜が遅くなっている上、低温が続かない年が多く、発酵の管理にも苦労しているためだ。気候と経験を頼りに作るスローフードの生産は年々難しくなっているようだ。
「すんき」は赤カブの葉を湯通しし、一昼夜ほど保温して乳酸発酵させた後、低温下で保存する。「葉の甘みが増す」という降霜を待って漬けはじめ、降雪前に漬け終わる。10月から12月上旬までに漬けていたが、近年は日程が後ろ倒しになってきた。
昨年のすんきコンクールで「名人」になった木曽郡王滝村の生産グループ「ひまわりマーケットすんきの里」は今シーズン、霜が降りた昨年10月末に漬け始めたが、その後は暖かい日が続き、作業が進まなかった。
「以前は11月に一気に作ったが、ここ数年は様子を見ながら少しずつ作っている」と五味沢ミチ子代表(66)。最初に「種」になるすんきを作る会員の家でも「家の中でできるだけ寒い場所を探さないといけなくなった」という。
木曽すんき研究会の北川聰会長(74)=木祖村=によると、気温が高いと乳酸菌以外の雑菌の活動が活発になり、うまく発酵しないという。生産を始めて5シーズン目となる「みたけグルメ工房」(木曽町三岳)の西尾礼子組合長(67)も「今シーズンは2回失敗した」。10月下旬と11月2日に漬けた分はうまくいかず、成功したのは11月10日以降だったという。
漬け終わりの時期も遅くなっている。みたけグルメ工房では前季より11日遅い12月15日。生産量は増えたが、一緒に収穫するカブが育ちすぎ、甘酢漬けなどの加工に向かなくなるといった問題も出てきている。
気象庁の地域気象観測システム(アメダス)が観測した10月の日最低気温の平均を調べると、1998年から2007年の10年平均は、88年-97年の平均より木曽福島、開田高原とも1・5度上昇。通年より上昇幅も大きく、すんきづくりに影響を与えていそうだ。
すんき作りは慣れた人でも気温の変動を見誤ると失敗するといい、昔から農家では赤カブの種をまく時期をずらし、漬ける時期と収穫時期を合わせてきた。そうした工夫は一層必要になりそうだ。「ふるさと体験館きそふくしま」(木曽町)ですんき教室を開く「ふるさと交流木曽」の野口広子常務理事(57)は「来季は種をまく時期を一週間ほど遅らせることも考えたい」と話している。
出典:信濃毎日新聞